Affinity でフォントは作れる?
Affinity 単体では作れません。Affinity(無料の Affinity 3 アプリや、以前の Affinity Designer・Photo・Publisher)は、インストール済みのフォントを使ったりテキストをカーブに変換したりはできますが、フォントファイル(OTF・TTF)を書き出す機能はありません。
これまでの回避策は手間のかかるものでした。1文字ずつ SVG として書き出し、フォントエディターに1つずつ読み込んで、各グリフの拡大縮小・位置合わせ・スペーシングを手作業で行います。基本的なアルファベットだけでも、数日かかるのは珍しくありませんでした。
Affont はこの溝を埋めるツールです。Affinity のスクリプトライブラリに2つのスクリプト(フォントのテンプレートを作るものと、描いた文字を送るもの)を追加し、Windows と macOS 用のアプリがフォントのコンパイル・インストール・書き出しを担当します。いわば Affinity でフォントを作るためのプラグインで、描く作業はこれまでどおり Affinity のツールをすべて使って行えます。
必要なもの
- Affinity 3.3 以降(Windows または macOS)。アプリは無料で、スクリプト機能が追加されたのがバージョン 3.3 です。
- Affont(Windows 10/11、または macOS 11 以降。Apple Silicon と Intel に対応)。$19 の買い切りで、3台のデバイスで使えます。
- タイポグラフィの知識は不要です。テンプレートにはベースライン、x ハイト、キャップハイト、スペーシング用のガイドがあらかじめ入っています。
Affont をインストールし、Affinity にスクリプトを追加する
- Affont をインストールして起動し、ライセンスキーを貼り付けます。
- ようこそ画面で、Affont.afscripts を保存するボタンをクリックします。
- Affinity でスクリプトライブラリパネルを開き、メニュー(▾)から「スクリプトを読み込む…」を選んで Affont.afscripts を指定します。
- Affont カテゴリが表示され、テンプレート作成用と送信用の2つのスクリプトが入っています。それぞれ初めて実行するときに Affinity から確認が表示されるので、「信頼して実行」を選びます。
この作業は最初の1回だけです。アプリをアップデートしても、リリースノートに記載がない限り、スクリプトを読み込み直す必要はありません。
フォントのテンプレートを作成する
テンプレート作成スクリプトを実行すると、ダイアログで次の項目を選べます。
- フォント名とファミリー名:たとえば「Brush Script」と「Regular」。
- 文字セット:ベーシック(A–Z、a–z、0–9 と句読点・記号)、英語・スペイン語・ポルトガル語用のラテン文字、大文字のみ、日本語のかな、または自分で指定した追加文字のみ。
- 追加文字:加えたい文字やグリフ名を自由に指定できます。例:ñ、f_i(合字)、a.alt1(異体字)。
- メトリクス:アセンダー、ディセンダー、キャップハイト、x ハイト。ほとんどのデザインは初期値のままで大丈夫です。
Affont は1文字につき1つのセルが並んだグリッドを作ります。各セルにはベースラインと高さのガイド、薄い参考文字、スペーシング用の2本のピンクの線が表示されます。テンプレートのレイヤーはロックされていて、その上の「あなたの文字」レイヤーにすぐ描き始められます。
文字を描く
各セルの上に、好きな方法で文字を描きます。ペンツール、シェイプとブーリアン演算、ベクターブラシ、カーブに変換したテキスト、貼り付けたアートワークなど、なんでも使えます。ストロークを展開しておく必要はありません。送信時に Affont がアウトラインに変換します。
- シェイプは、その中心が重なっているセルの文字として扱われます。レイヤーに振り分ける必要はありません。
- まずは n、o、H、O から描きましょう。この4文字で、ほかのすべての文字の線の太さとリズムが決まります。
- パーツを使い回しましょう。n から h・m・u が、o から b・d・p・q が作れます。
- 丸い文字(o、s、O)は、ベースラインや x ハイト・キャップハイトを少しだけはみ出させます。これはオーバーシュートと呼ばれ、平らな文字と同じ大きさに見せるための工夫です。
- カーブに変換していないテキストはスキップされ、どの文字だったかを Affont が知らせてくれます。
スペーシングを設定する
各セルには ·LSB と ·RSB(左右のサイドベアリング)という2本のピンクの線があります。これをドラッグして、各文字が占める幅を決めます。2本の線の間隔が、フォントでのその文字の幅になります。
手早く進めるコツ:「nnonoonn」が均一に見えるまで n と o の余白を調整し、大文字も同じように H と O で整えます。ほかの多くの文字は、この4文字と同じ形の側面を持っています。
送信すれば、フォントがインストールされる
Affont アプリを開いた状態で、送信スクリプトを実行します。アプリはプロ向けのフォントツールでも使われているオープンソースのエンジン fontTools でフォントをコンパイルし、ユーザーのフォントとしてインストールします。数秒で Affinity のフォント一覧にも、ほかのすべてのアプリにも表示されます。
文字を直したら、何度でも送信し直せます。Affont がインストール済みのバージョンを置き換えるので、デザインの途中でも自分のフォントで文字を入力して確かめられます。
Affont アプリで仕上げる
- カーニング:サンプルテキスト上で、文字を隣の文字に向かってドラッグします。カーニンググループ、たたき台としての自動カーニング、別のフォントからのメトリクスとカーニングの読み込みにも対応しています。
- 合字と異体字:セルに f_i や a.alt1 と名前を付けるだけで、Affont が OpenType 機能(liga、salt、ss01…)を書き込みます。
- アクセント付き文字:基本の文字と記号を描けば、á、à、â、ã、ä、ñ、ç などを Affont が自動で組み立てます。
- グリフエディター:Affinity に戻らずに、ノードやハンドルの修正、重なったシェイプの結合、反転や変形ができます。
- フォント情報とファミリー:デザイナー、バージョン、ライセンスを設定し、追加のスタイル(Bold、Italic…)を1つのファミリーにまとめられます。
OTF・TTF・WOFF2 で書き出す
- OTF は、Affinity で描いたのと同じ3次ベジェ曲線をそのまま保持します。デザインアプリで使うならこれが最適です。
- TTF は、古いソフトウェアや一部のデバイスとの互換性がもっとも高い形式です。
- WOFF2 はウェブサイト用です。
複数の色やグラデーションで文字を塗った場合は、カラーフォント(COLR のフォールバック付き OpenType-SVG)も書き出せます。カラーフォントに対応していないアプリでは単色で表示されます。
よくあるトラブル
- 文字が違うセルに入ってしまった:中心が正しいセルに重なるように移動します。
- 文字が抜けている:ライブテキストのままになっていないか確認し、「レイヤー」▸「カーブに変換」を実行します。
- 「送信」が反応しない:Affont アプリが開いている必要があります。アプリに接続できない場合はスクリプトが知らせてくれます。
- 文字の間隔が詰まりすぎ・空きすぎに見える:まずピンクの線を調整し、カーニングは AV、To、LT のような特定のペアにだけ使います。